2026-09-29
子どもの「豊かな人間性」をどう育む? 国立学園小学校に聞く、見守りのヒント
子どもにどこまで任せ、どこまで大人が関わるのか。自分で考え、行動する力を育てたいと思う一方で、まだまだ大人の助けが必要な小学生との関わり方に、迷う保護者の方も少なくありません。
子どもの自主性を尊重しながら、その成長を支えるためには、どんな心構えや実践が大切なのでしょうか。「豊かな人間性を培う」を教育目標の一つに掲げる東京の私立・国立学園小学校に、日々の教育実践から、家庭での子どもとの関わりにもつながるヒントを聞きました。
豊かな人間性を培うために
JR中央線の国立駅から歩いて10分ほど。多くの学校が集まり、「文教地区」として知られる東京都国立市の閑静な住宅街に、国立学園小学校はあります。
同校は1926年に創立した共学の私立小学校で、2026年に100周年を迎えました。校内には、木々に囲まれた「しらかばの池」や畑、ビオトープ、アスレチックなどがあり、子どもたちが身近に自然と触れ合える環境が広がっています。
子どもたちが、「おたまじゃくし」や「アメンボ」などの生き物を見つけて
夢中で観察するしらかばの池は、休み時間の人気スポット
そんな同校が創立以来大切にしているのが「豊かな人間性を培う」ための教育です。「自ら考え、自ら学び、自ら行動する」ための時間や場を大切にし、一人ひとりの子どもの成長を教員が見守っています。
「豊かな人間性を育むうえで最も大切なのは、人と人とのつながりです。なかでも、子どもにとって最も身近な存在である家族との日々のコミュニケーションは、その土台になる。特に低学年の子どもたちは、学校であったことを親にたくさん話します。でも、そのときに『今は忙しいから』と聞いてもらえないことが続けば、だんだんと話さなくなってしまう。学校で何が楽しかったのか、実は困っていることがあるのか。一番話したい相手は、やっぱりお父さん、お母さんだと思うんです」
こう話してくれたのは、校長の佐藤純一先生。日々の何気ない会話を重ねることは、子どもの小さな変化や悩みに気づくことにもつながると強調します。そのため学校では、一人の子どもを一人の担任だけで見るのではなく、複数の先生が見守る体制を構築し、学校全体で子どもの成長を支えています。
時代に先駆けて学校週5日制や教科担任制を導入するなど
先進的な取り組みを次々と実現してきた国立学園小学校で校長を務める佐藤先生
「少しでも気になることがあれば、親も先生も地域も一緒になって考え抜いて、子どもたちを育てていく。どれだけ真剣に子どもを見ているか、観察しているか、分かっているか、知っているか。つまりは、私たち大人が子どもに対して『本気でぶつかっていく』ことができていなければ、本当の意味で子どもを見守ることはできないと考え、日々教育の現場に立っています」
自分たちで決める経験を積み重ねる
では、子どもたちの人間性を育むために、学校ではどのようなことを実践しているのでしょうか。国立学園では大切にしていることが大きく2つあり、その一つが、子どもたち自身が「決める」機会をできるだけ多くつくることだと話します。
「クラスでの役割や運動会、修学旅行などは、先生がすべての内容を決めるのではなく、子どもたち自身で考え、話し合って決めるようにしています。例えば、6年生の修学旅行では、3泊4日で金沢や能登を訪れ、班ごとに行き先や体験したいことを考えて行動します。なかでも3日目に決められているのは、朝にホテルを出る時間と夕方に戻る時間だけ。その間をどこで、どのように過ごすかは、子どもたち自身に委ねています」
運動会では、ピストルやゴールテープなどの係も子どもたち自身が担当する
もちろん、意見がぶつかってけんかをしたり、思い通りにいかず泣いたりすることも。それでも、自分たちで決め、実際にやってみるところまで経験することが重要だそうです。
「自分たちで決めれば、当然、意見がぶつかることもあります。そんなとき、友達とどう折り合いをつけるのか、思い通りにいかなかったらどうするのか。大人が先回りせず、そうした経験を重ねることが大切です。遠足でも修学旅行でも運動会でも、『自分たちがつくった』という実感のなかで、相手の考えを知ったり、『自分にはこんなこともできたんだ』と発見したりする。そうした積み重ねが、豊かな人間性を育んでいきます」
学校行事のような大きな機会でなくても、家庭のなかには、子ども自身が考えて決められる場面が多くあります。翌日の持ち物を自分で準備する、家でのお手伝いの役割を決めるなど、まずは身近なことから本人に委ねてみる。大人がすぐに答えを出すのではなく、ときには迷ったり失敗したりする過程も含めて見守ることが、子ども自身の「できた」という実感につながりそうです。
「心が動いたこと」を、自分の言葉に
もう一つ同校が大切にしているのが、自分の心が動いた瞬間に気づき、それを言葉にすること。そのために、1年生から日記を書く習慣づくりを進めています。
「はじめは絵日記からスタートし、次第に文章でより多くのことを表現するようになります。子どもたちには、『心が動いたことを書きましょう』と伝えていますが、大人もハッとするような気づきがたくさんあるんです」
校長先生はある児童の日記の一文を紹介してくれました。
「秋のある日、『帰り道に落ち葉を踏んだら、シャリシャリ音がして楽しくなった』と日記に書いている子がいました。それで、お父さんやお母さんにもその音を聞かせたいから、落ち葉を持って帰ろうと思ったと。でも、たくさんありすぎて、持って帰るのは結局やめたそうです。大人から見れば何気ない出来事かもしれませんが、その子が何を見て、何を感じたのかがよく伝わってきますよね。心が動いたことを言葉にすることで、自分が何を感じ、何を考えたのかを客観的に見つめることができる。その営みを積み重ねることで、自分なりの感じ方や考え方が育っていくのだと思います」
家庭でも、子どもが感じたことを言葉にする機会は日々の会話のなかにつくることができます。「今日、学校どうだった?」だけでなく、「今日、一番おもしろかったことは?」「びっくりしたことはあった?」など、子どもの心が動いた瞬間に目を向けてみるのも一つでしょう。
すぐにうまく言葉にできなくても、大人が急いで答えを求めず、子どもの話にじっくりと耳を傾ける。その時間が、自分の感じたことや考えたことを言葉にするきっかけになりそうです。
地域みんなで、子どもたちを育てる
子どもを育て、見守るための「輪」は、家庭や学校のなかだけにとどまりません。国立学園では、地域とのつながりも古くから大切にしています。
毎年新年度が始まる4月には、子どもたちが国立駅や交番、バス会社などを訪ね、「今年もよろしくお願いします」とあいさつ。11月の勤労感謝の日には、学校の用務員や清掃スタッフをはじめ、駅や交番、バス会社など、日頃お世話になっている人たちへ手紙や花束を届けているそうです。
「学校は地域の方に愛されてこそ成り立つもの。登下校では地域の皆さんにご迷惑をかけることもある。だからこそ、普段から顔の見える関係をつくっておきたいと考えています。国立学園では、駅見学を行ったり、電車の運転士を招いて話を聞いたりと、地域で働く人と触れ合う機会も多く設けています。学校の外へ出てさまざまな人と出会い、自分たちが多くの人に支えられていることを知る。そうした経験が、子どもたちの世界を広げていきます」
さまざまな分野の著名人や有識者を招いた講演会を学内で開催。
学校関係者だけでなく、地域の住民も参加できる。
そして佐藤先生は最後に、子どもたちに豊かな人間性を求めるには、周囲の大人自身もまた、人間性を育み続けることが大切だと話します。
「一番子どもの身近にいる大人である私たち自身が、豊かな人間性をもっていなければ、子どもたちの豊かな人間性も育てられません。子どもにいろいろなことに興味を持ってほしい、さまざまな人と関わってほしいと願うのであれば、まずは私たち大人自身が、身の回りの出来事や人に関心をもち、新しいことに触れながら、自分の世界を広げていく。そうやって大人も自分自身の人間性を育て続ける姿を、子どもたちに見せていくことが大切なのではないでしょうか」
編集後記
子どもに任せることと、大人がしっかり関わること。一見すると相反するようですが、国立学園小学校の取り組みから見えてきたのは、そのどちらも子どもの成長には欠かせないということでした。
子どもが自分で考え、決める場面では、大人が先回りしすぎずに見守る。一方で、子どもが何を感じ、何を考えているのかには関心をもち、話にしっかりと耳を傾ける。そして、気になることがあれば家庭だけで抱え込まず、学校や地域の大人とも一緒に考えていく。
私たちの子ども見守りGPS「BoTトーク」もまた、子どもの安全を見守るだけでなく、子ども自身が考え、行動する力を育むことを大切にしながら、機能開発を続けています。今回の取材を通じて、国立学園小学校に通う多くのお子さんにもBoTトークを使っていただいていると知り、とても嬉しく感じました。
子どもを信じて任せながら、必要なときにはしっかりと向き合う。BoTトークもまた、そんな親子の見守りに寄り添える存在を目指して、これからも子どもたちの成長と家族の安心を支えていきたいと思います。