2026-09-15
「狙われにくい子」は何が違う? 犯罪心理学者に聞く、子ども見守りGPSを“最強の防犯ツール”にする方法
「知らない人についていかない」「危ない場所には近づかない」。子どもを犯罪から守るため、学校や家庭ではさまざまな防犯対策が行われています。
こうした対策に対して、犯罪者の視点から一歩踏み込んで考えるのが、犯罪心理学者の出口保行さんが提唱する「攻める防犯」です。犯罪者に「この子は狙えない」と思わせ、そもそも犯行を実行させない。そのために、親子で何ができるのでしょうか。
犯罪者心理の分析に長年携わってきた出口さんに、子どもを守るために知っておきたい防犯の考え方と対策について伺います。
プロフィール
出口保行氏
1985年東京学芸大学大学院を修了し、同年法務省に心理職として入省。全国の少年鑑別所・刑務所等で犯罪者を心理分析する資質鑑別に従事。分析した犯罪者は1万人を超える。その他、法務省矯正局、法務省法務大臣官房秘書課勤務等を経て、法務省法務総合研究所室長研究官を最後に退官し、同時に東京未来大学教授に着任。2013年からはこども心理学部長、2024年からは副学長も兼務。都庁や警視庁千葉県警等の講師、足立区防犯アドバイザーも務める。著書の「犯罪心理学者が教える子どもを呪う言葉・救う言葉(SB新書)」はベストセラーを記録。
犯罪を実行させない“攻める防犯”とは?
ーー出口さんは「攻める防犯」という考え方を提唱されています。一般的な防犯とは、どのような点が違いますか?
これまでの防犯は、犯罪者が攻撃してきたときに「どうやって自分や子どもを守るか」という、防衛的な発想が中心でした。私はこれを「守る防犯」と呼んでいます。
一方で、私はこれまで刑務所や拘置所などで、多くの犯罪者の心理分析をしてきました。そこで数多く見てきたのは、犯罪者が「犯罪をしたとき」だけではなく、「やろうと思ったけれど、やれなかった」という事例です。
犯罪の動機が生まれたとしても、必ず実行するわけではない。犯罪者が「ここではできない」「この相手はやめておこう」と思う状況をつくれば、犯罪そのものを起こさせずに済む。これが「攻める防犯」の基本的な考え方です。

出口さんは犯罪心理学の観点から、数多くの著書を執筆している
ーー犯罪者が犯行を思いとどまるのは、具体的にどのようなときでしょうか?
犯罪者は「リスク」と「コスト」を意識しています。捕まったり、犯罪が発覚したりする可能性が「リスク」。犯罪によって仕事や家族、社会的な信用など、どれだけ大きなものを失うかが「コスト」です。この2つが高いと感じれば、動機があっても実行をやめることがあります。
たとえば、すごくシンプルですが、地域での「挨拶」にも効果があります。犯罪をしようとしている人が「こんにちは」と声をかけられると、「自分がこの時間、この場所にいたことを知っている人がいる」と感じる。つまり、挨拶をした人が「目撃者」になるわけです。
実際、犯罪者との面接では、声をかけられたことで犯行をやめたという話が何度も出てきました。犯罪者が何をされたら嫌なのかを考え、実行する気をそぐ。これが「攻める防犯」の基本です。
犯罪者は、子どもの「警戒心」を見ている
ーーでは、子どもを狙う犯罪者は、子どものどのような行動や様子に着目しているのか教えてください。
一番大きいのは、その子が緊張感や警戒心を持っているかどうかです。人が緊張しているかどうかは、周囲への関心に表れます。周りを見渡しているか、人の動きに目を配っているか、音や気配に反応しているか。そういう細かな部分を犯罪者は見ています。
警戒している子どもを襲えば、すぐに大声を出されたり、逃げてどこかへ駆け込まれたりするかもしれない。そうなれば、犯罪が発覚する可能性も高くなります。つまり、犯罪者にとっては手を出すリスクが高い。反対に、「自分は大丈夫」と思って自分の世界に没頭し、周囲に意識が向いていない子どもは、狙いやすいと判断されることがあります。
ーーそうした「自分は大丈夫」という意識は、周囲から見ても分かるものなのでしょうか?
分かります。たとえば、後ろから誰かがついてきていても気にしない。曲がり角の先から誰かが出てくるかもしれないと予測していない。マンションのオートロックでも、自分の後ろから一緒に入ってくる人がいないか確認しない。そうした行動には、「大人に脅威を感じていない」「自分が狙われるかもしれないと思っていない」という意識が表れます。
そもそも子どもを狙う犯罪者には、大人を相手にすることを怖がる人が多いんです。反撃されるのが怖いため、より年少の子どもを対象にする。ですから、相手が子どもであっても「この子は警戒している」「すぐに反応しそうだ」と感じれば、非常に狙いにくくなります。
だからこそ大切なのは、子どもに「自分にも何か起こる可能性がある」と適度な警戒心をもたせ、周囲に意識を向ける習慣をつくることです。
「夕方の公園」より注意したい、小学校からの帰り道
ーー犯罪者が「この子は狙いやすい」と判断する環境やタイミングに、特徴や共通点はありますか?
あります。以前、子どもを対象とした性犯罪について調査したところ、犯行が最も多かった時間帯は「午後3時台」、場所は「路上」、対象年齢では「7歳」という結果が出ました。つまり、注意したい場面の一つが小学校1年生の学校帰りと言えます。

ーー体が小さいことも一因かと思いますが、なぜ小学1年生は狙われやすいのでしょうか?
犯罪者側からすると、行動を予測しやすいことが大きいですね。低学年、とくに1年生は、学校が終われば寄り道をせず、同じような時間に同じ道を通って帰ることが多い。一方、高学年になると、寄り道をしたり、習い事に行ったりして行動が変わってくる。「待っていても来ない」ということが起きます。
子どもを狙う犯罪者は、失敗することを非常に恐れています。だからこそ、「この時間にここで待っていれば来る」という確実性の高い状況を選ぼうとする。低学年が狙われやすい背景には、そうした事情があります。
ーー保護者としては、「夕方の暗い公園」などを危険な場所としてイメージしがちです。
そうなんです。保護者に聞くと、「夕方」「公園」を危険な箇所だと考える人が多い。でも、その認識だけで子どもに「夕方の公園は危ないから早く帰ってきなさい」と伝えていたら、本当に注意してほしい学校帰りへの意識が薄くなってしまいます。大切なのは、イメージだけで危険を決めつけないことです。
子ども見守りGPSは「最強の防犯ツール」になりうる
ーー子どもの防犯では、防犯ブザーなどをもたせるケースも一般的です。こうした防犯機器を使う際に、注意すべきことはありますか?
一番気をつけてほしいのは、「持っているから安心」と思ってしまうことです。例えば子どもは「防犯ブザーを持っているから大丈夫」、親は「持たせているから大丈夫」と安心してしまう。でも、それによって周囲への警戒レベルが下がったら逆効果です。
防犯ブザーの場合、最初は親子で使い方を確認するでしょう。ですが時間が経てば、使い方が分からなくなることもある。いざというときにすくんですぐ使えなかったり、電池が切れていたりすることもあります。そのため、持たせて終わりではなく、「どういうときに使うのか」「本当にすぐ使えるのか」を定期的に確認し、訓練する必要があります。
防犯機器は、安心して警戒レベルを下げるためではなく、むしろ警戒レベルを上げるために持つものだと考えてほしいですね。
ーー最近では、防犯ブザーだけでなく、私たちの子ども見守りGPS「BoTトーク」のような見守りGPSを持たせる家庭も増えています。GPSは子どもの防犯に有効でしょうか?
子ども見守りGPSも考え方はまったく同じです。持っていることで子どもが安心し、持たせていることで親が安心してしまったら、それではダメ。大切なのは、なぜ持つのかを親子で理解して、きちんと活用することです。地域でどんなことが起きているのかを共有したり、どういう場面に注意するのかを話したり、いざというときにどう使うのかを確認してください。

6年連続で利用者数・顧客満足度No.1を獲得している子ども見守りGPS「BoTトーク」
ーー最後に、「攻める防犯」という観点で、子ども見守りGPSをどのように活用していくことが有効か、お考えをお聞かせください。
子ども見守りGPSは、何かあったときだけ使うものではなく、日常的に使うものですよね。だからこそ、普段から親子で防犯について話し、意識を高めるきっかけにもできる。そうやって活用するのであれば、子ども見守りGPSは最強の防犯ツールになりうると思います。
繰り返しになりますが、「持っているから安心」ではなく、持つことで親子の警戒レベルを上げ、犯罪者にも「この子は狙いにくい」と思わせる。そこが大切です。
例えば、子ども見守りGPSを周囲から見えるように身につけながら、それに安心しきることなく、子ども自身も周囲をきちんと警戒している。「見守られているうえに、本人も警戒している」と伝わること自体が、犯罪者に狙うことをためらわせる要素になります。
防犯機器を持つことを安心材料にするだけでなく、日頃の警戒意識を高め、そもそも犯罪を実行させないために活用する。それこそが、これからの子どもの防犯に必要な考え方です。
※画像は東京未来大学の公式HPから引用
