2026-07-21
【ネット依存の専門家に聞く!】子どものゲームや動画、家庭でのルールづくりのコツ
学校がお休みになり、自由な時間が増える夏休み。生活リズムも普段とは変わり、子どもたちにとっては「特別な毎日」が始まります。普段できないことに挑戦したり、好きなことに思い切り没頭したりと、楽しみにしているお子さんも多いことでしょう。一方で保護者にとっては、「毎日何をして過ごそう」「ネットや動画、ゲームばかりにならないだろうか」と悩む時期でもあります。
そこで今回は、ネット依存専門心理師・公認心理師の森山沙耶さんに、夏休みに改めて考えたいネットや動画との付き合い方や、家庭でのルールづくりについて伺いました。
使わせないのではなく、どう付き合うかを考える
私は普段、子どもとインターネットの問題について、カウンセリングで相談を受けたり、保護者や教育関係者向けの講演を行ったりしています。
近年は、子どもがインターネットやデジタル機器に触れる機会が急速に増えています。現在は学校でもタブレット学習やプログラミング教育が進み、子どもの方がタブレットの使い方に詳しいことも少なくありません。
インターネットやデジタルツールは、学習面で役立つだけでなく、ゲームや動画を通じて友達と交流したり、新しいことを学んだりと、子どもたちにとっては生活の一部になっています。

だからこそ大切なのは、「使わせない」と考えるのではなく、「どう付き合っていくか」を考えること。ゲームやインターネットを上手に活用できている場面があれば、「こんな使い方もできるんだね」と認める声かけをしながら、夢中になりすぎていると感じたときには家庭でルールを設けるなど、メリハリをつけて付き合っていくことが大切です。
YouTubeやゲームには、「長く利用したくなる」仕掛けや仕組みが数多く取り入れられています。特に10代は、欲求をコントロールする前頭葉が発達の途中にあるため、大人よりも依存的な使い方になりやすい時期です。そのため、子どもを守りながら、インターネットやゲームと上手に付き合っていくことが求められます。
ルールを決める上で大切な4つのポイント
動画やインターネットのルールは、ただ決めればよいというものではありません。親子で無理なく続けていくためには、押さえておきたい4つのポイントがあります。

1:親が一方的に決めるのではなく、子どもと一緒に話し合って決める
子どもに「自分で決めた」という感覚をもたせることは、ルールを守る上でとても重要です。親だけが決めたルールは反発を招きやすく、かえって依存リスクを高めるデータもあります。とはいえ、子どもだけでは先の見通しが甘く、非現実的な計画を立てがちなので、家族で話し合い、最終的に子どもが「自分で決める」ことができるよう、サポートしてみてください。
2:子どもの気持ちにも耳を傾ける
インターネットや動画、ゲームを利用する背景には、「友達と遊びたい」「リラックスしたい」といった子どもなりの気持ちがあります。まずはその思いを受け止めたうえで、なぜルールが必要なのかを丁寧に説明し、納得してもらうことが大切です。
一方的に制限されると、子どもは「なぜダメなのか」が分からず、反発したり、隠れて使ったりすることにもつながりかねません。「夜更かしすると翌日疲れてしまうから」「目を休ませる時間も必要だから」など、理由を伝えながら一緒に考えることで、子ども自身もルールを守る意識をもちやすくなります。
3:ルールを具体的にする
できるだけ具体的に、下記の5つのルールを決めておくことをおすすめします。
・利用時間:1日何時間まで利用するか
・使用するアプリ:どんなアプリなら使ってよいか
・誰と利用するか:一人で遊ぶのか、友達と一緒に遊んでもよいのか
・利用する場所:自宅だけか、友達の家でも良いのか
・課金:ゲーム内の課金を認めるのか
使用時間については、「この時間なら絶対に安全」という明確な基準を示すデータは現時点ではありません。しかし、米国などの海外では1日2時間程度の利用を目安としている事例が出てきています。また、イギリスのキングス・カレッジ・ロンドンが実施した研究によると、1日3時間以上、スクリーンに向かって過ごす時間が続くと、将来的に子どもたちの心理的な不調(不安やうつ症状)が増える傾向があることが明らかになっています。

インターネットを利用している低年齢層の子供の平均利用時間は年々増えており
令和6年度調査では約2時間9分だった(出典:令和7年子ども家庭庁)
一方で、単純に時間だけを制限するよりも、「寝る前の1時間は使わない」「宿題を終えてから夕食までの時間は動画を視聴しても良い」など、生活リズムに合わせてルールを決めることも効果的です。
4:ルールを守れなかった場合のルールを決める
ルールを守れなかったときの対応(ペナルティ)も、その場の感情で決めるのではなく、あらかじめ親子で話し合っておくことが大切です。例えば、「翌日のゲーム時間を短くする」など、事前に約束しておくと、お互いに納得して対応しやすくなります。
ルールを守れないことが一度あっただけで、過度に心配する必要はありません。しかし、「ルールを守れない状態が続く」「隠れて夜中に利用する」「現実のストレスやつらさから逃れるために使う」といった様子が見られる場合は、注意が必要です。
そのような場合は、ご家族だけで抱え込まず、学校のスクールカウンセラーや小児科の医師、専門機関などに早めに相談することも大切です。
一番大切なのは、話せる関係性を築くこと
子どものゲームやインターネットとの付き合い方に、悩んだり不安を感じたりする保護者は少なくありません。ですが、制限することから始めるのではなく、まずは子どもがどんなゲームを楽しみ、何に夢中になっているのかを知ることをおすすめします。
子どもの世界を知ることで、「どんなルールなら無理なく守れそうか」「どんな声かけが合っているか」も見えてきます。実際に一緒に遊んでみると、「なぜ子どもが惹かれるのか」を理解でき、新たな発見があるかもしれません。
最も避けたいのは、子どもが親に相談できなくなってしまうこと。ゲーム内でのトラブルやSNSで困ったことがあったとき、「まずは親に話そう」と思える関係性を日頃から築いておくことが、子どもを守る何より大切な土台になります。
夏休みは、親子でゲームや動画との付き合い方について話し合うよい機会です。ぜひご家庭でも一緒にルールを考えながら、安心して楽しい夏休みをお過ごしください。
プロフィール
森山沙耶氏
ネット・ゲーム依存予防回復支援サービスMIRA-i(ミライ)所長。一般社団法人日本デジタルウェルビーイング協会代表理事。公認心理師、臨床心理士、社会福祉士。東京学芸大学大学院修了後、家庭裁判所調査官を経て、病院・福祉施設にて勤務。2019年ネット・ゲーム依存予防回復支援サービスMIRA-i(ミライ)を立ち上げ、カウンセリングや予防啓発活動を行う。著書に『専門家が親に教える 子どものネット・ゲーム依存問題解決ガイド』(Gakken)がある。