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【山形県長井市】見守りGPSからデジタルツインまで。データで支える子どもと地域の安全

【山形県長井市】見守りGPSからデジタルツインまで。データで支える子どもと地域の安全

子どもたちが毎日歩く通学路や、放課後に集まる公園。身近な場所での安心を、デジタルの力でより支えていこうとする取り組みが、山形県の南部・置賜(おきたま)地域に位置する長井市で進んでいます。

同市が推進するのは、子どもたちや地域住民がより安心して暮らせるまちを目指した、デジタル技術の活用。子どもたちの行動データを熱中症対策に役立てたり、街を仮想空間に再現する「デジタルツイン」で災害時の避難を支えたり。データを活用することで、これまで見えにくかった状況を捉え、必要な備えや対策へとつなげようとしています。

長井市が進める取り組みについて、長井市総合政策課デジタル推進室室長の小倉圭さんにお話を伺いました。

子どもの行動データを活かした熱中症対策へ

長井市は2021年度から、あらゆる分野でデジタル技術を生かし、安心して住み続けられるまちを目指す「スマートシティ長井」の取り組みを進めています。内容は、暮らしを便利にすることにとどまりません。デジタルの力でこれまで把握できなかったさまざまなリスクを把握するとともに、いち早く捉え、地域の安全・安心につなげる施策にも力を入れています

近年ますます深刻になる夏の暑さへの対策も、その考え方から生まれた取り組みです。

「きっかけは近隣の自治体で、中学生が部活動の帰りに熱中症で亡くなる事故があったこと。そこで本市でも対策が急務だと考え、現在、小中学生がよく行動するエリア等への熱中症センサーの設置を検討しています」

熱中症センサーでは、気温や湿度などの気象データを観測し、暑さ指数を自動で算出。その情報を小学校内で教職員が確認できるようにすることで、暑さの状況を正確に、いち早く把握し、迅速な判断や対策につなげられるようにできることを検討しているといいます。

「センサーを活用することで、同じ市内でも若干異なる各地点の状況を正確に、なおかつ効率的に把握し、必要な対策へとすばやくつなげられるようになると考えています」

さらに、センサーの設置場所を検討するうえで役立てようとしているのが、子ども見守りGPS「BoTトーク」から得られる行動データです。

「どこにセンサーを設置すれば、より効果的なのか。その検討に、これまで子どもの日々の見守りに活用されてきた『BoTトーク』の行動データを活用することも視野に入れています(データ提供に別途合意があった市民のみ)。子どもたちが実際に通るルートや集まりやすい場所を把握し、よりリスクの高い地点を見極めるために役立てたいと考えています」

「BoTトーク」は、子どもの現在地などを確認できる子ども見守りGPSです。長井市では2022年、市内の小学校に通う児童の希望者を対象に、端末の無償貸与を開始。現在は端末の購入費を補助するかたちで、多くの家庭に利用が広がっています。

「BoTトークを利用している家庭の保護者からは、『夏の暑い日に子どもが飲み物を持っていくのを忘れてしまった際、位置情報を確認して届けることができた』『部活動の帰りに大雨が降った際、居場所を確認して迎えに行くことができた』など、日々の暮らしの中で役立ったという声が届いています。近隣自治体では、先述したような事故もあり、子どもの居場所を把握でき連絡も取り合えるBoTトークのような端末の必要性を改めて感じました。今後は熱中症センサーだけでなく、防犯カメラの設置場所を検討する際にも、BoTトークから得られる行動データの活用を検討していきたいと考えています」

街をまるごと仮想空間で再現。「デジタルツイン」で命を守る

こうしたデータ活用は、熱中症対策にとどまりません。長井市では、災害時に地域の人々の命を守るための取り組みにもデジタルの力を生かそうとしています。

その基盤のひとつとして期待されているのが、現実の街を仮想空間上に再現する「デジタルツイン」です。長井市では、NTT東日本株式会社など4社の民間企業と連携協定を締結し、その構築に着手。デジタル空間上に再現した道路や建物に、防災や気象などのさまざまなデータを重ね合わせることで、災害時のリスクを可視化し、地域の安全に役立てようとしています。

「長井市内には多くの水路や河川があり、水資源が豊富であるため、水害への備えも欠かせません。そこで、衛星画像やドローンによる空撮データを活用して3D地図をつくり、河川の水位などのリアルタイムデータを組み合わせます。この技術によって、川が増水した際に、どこが、どのくらいの速さで、どの程度浸水する可能性があるのかを、より細かく予測できるようになります

仮想空間での災害の発生や被害状況を予測できれば、避難のあり方も大きく変わります。これまで主流だった、浸水の恐れがある地域から安全な場所へ移動する「水平避難」だけでなく、例えば冠水リスクの高いアンダーパスを避け、近隣の建物の上層階へ避難する「垂直避難」も有効な選択肢となります。

「災害が起きたとき、必ずしも遠くまで逃げることが安全とは限りません。道路の現状を踏まえ、『今いる場所から、どう避難するのが最も安全なのか』を把握できることも重要です。将来的には、より精緻な避難ルートの提示にもつなげていきたいと考えています」

災害時に求められる行動は、その時、その場所によって異なります。街の状態をデータで捉え、画一的な避難ではなく、それぞれの場所や状況に応じた、より安全な避難につなげていく。デジタルツインには、そんな役割も期待されています。

データをつなぎ、地域の安心を支える

熱中症対策から災害時の避難、子どもの見守りまで、長井市が目指しているのは、それぞれのデータを個別に活用するだけでなく、分野を越えてつなぎ、地域の安心に役立てていくことです。異なるデータを組み合わせることで、これまで見えにくかったリスクを捉え、必要な対策へとつなげていきます。

「人口が減っていくなか、これまで人の力で担ってきたことを、すべて同じように続けていくのは難しくなります。だからといって、デジタルで人を置き換えたいわけではありません。人の力をデジタルで補い、地域に必要な機能を維持しながら、できることをさらに広げていく。そのためにテクノロジーを活用していきたいと考えています」

子どもの居場所を見守ること。暑さによるリスクをより正確に、いち早く察知すること。災害時に、より安全な避難方法を導き出すこと。長井市はこれからも、人の目や経験に加えて、データやテクノロジーの力を活用しながら、地域の安心へとつなげていきます。

 

参照

長井市公式ホームページ スマートシティ長井の実現に向けた取り組み

【山形県長井市】スマートシティが育む、“見守り”の新しいかたち

子ども見守りGPS「BoTトーク」

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