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もしもに備える「家庭の防災」― 専門家・和田隆昌さんに聞く、防災を習慣化するためのポイント

もしもに備える「家庭の防災」― 専門家・和田隆昌さんに聞く、防災を習慣化するためのポイント

地震や台風、豪雨など、いつ起こるかわからない災害。大人でも不安を感じる状況で、子どもたちの安全をどう守るかは、多くのご家庭にとって気になるテーマではないでしょうか。

今回は、防災の専門家である和田隆昌さんに、日常生活に取り入れやすい防災の考え方や、子どもと一緒にできる備えの工夫を伺いました。

いざという時、どう動く?

災害時に、子どもが「どこで」「誰と」「どう過ごしているか」によって、必要な備えや対応は異なります。特に小さな子どもは、突然の出来事にパニックになってしまうことも。だからこそ、「どんな場面で、どう動けばいいか」を、家族で事前に共有しておくことが大切です。

ここでは、災害時の状況を大きく2つに分けて、それぞれの備え方を考えてみましょう。

①子どもが家族や保護者と一緒のとき

家族や保護者と一緒に過ごしている時間帯であれば、基本的には保護者が子どもを守ることができます。避難する際も手を繋いで、子どもの様子を注視しながら行動しましょう。

・避難ルートは複数用意しておく
避難ルートを1つに決めてしまうのは危険です。生活圏のどこが安全で、どこが危険かを把握し、複数の経路を日ごろからシミュレーションしておきましょう。

・声がけにもひと工夫を
大人の不安は子どもにも伝えわるもの。避難が必要な場合は「避難場所でお友達が待ってるよ」「誰が一番早く避難所に到着するか、競争しよう」など、ポジティブな言葉で行動を促す声がけが効果的です。お気に入りの人形やお菓子などを避難袋に入れておくのもおすすめ。ただし、ゲームなど音の出るものや電源が必要なものは避けましょう。

・避難所では「役割」を持たせる
避難所では不安やストレスがたまりやすいため、簡単なお手伝いや掃除などの「役割」を与えることで、子どもが落ち着きやすくなります。

②家族や保護者のそばに子どもがいない時

 災害はいつどこで起きるかわかりません。家にいても保護者が別の部屋にいたり、子どもが留守番をしていたり、学校にいたりと、保護者がそばにいない場面は多くあります。そのようなときでも、子ども自身が行動できるよう備えておきましょう。

・状況に応じて自ら避難できるように
特に津波の危険がある沿岸部や、延焼火災の可能性がある木造密集地域では、家族の帰宅を待っていては間に合わない場合もあります。「こういうときはこう動く」といった行動指針を、子どもにもわかる言葉で繰り返し伝えて、実際に訓練しておきましょう。たとえば「サイレンが鳴ったら、〇〇の避難場所に行く」といった具体的な行動と場所をセットで覚えさせておくことが重要です。伝えるルールは、単純・シンプル・明確に、が原則で、「走らない」「揺れたら●●に移動」「頭を枕で守る」など、2〜3つに絞っておきましょう。

・学校にいる時間も安心できるように
災害時の学校の対応方針(校内待機、保護者の引き取りなど)や、連絡体制(SNSグループや電話網など)も確認しておきましょう。保護者が迎えに行けない場合に備え、信頼できる家庭に一時的に預かってもらえるようにしておくのも有効です。万が一、家族と連絡がとれなくなった場合に備え、祖父母や隣人、親しい友人の連絡先も記載したリストを家に掲示したり、縮小版を財布や定期入れに入れておくのも有効です。

防災を習慣化するための、わが家の防災3つのポイント

防災面でも安心のGPSを活用

日中、ご家族と子どもが離れているときに自然災害が発生する可能性は十分にあります。すぐに再会できない状況では、何とかして子どもと連絡を取りたいと思うもの。しかし、ビーサイズが行った調査(※1)では、災害時の子どもとの「連絡手段」を準備できている家庭はわずか 2 割に留まることが判明しました。

子どもがスマートフォンを持っていれば、避難所検索アプリや位置確認ツールなどをあらかじめ入れておくことがおすすめです。ただし、スマホの学校への持ち込みが制限されていたり、日常的な利用を控えたいご家庭も多いでしょう。

そんなときに頼りになるのが、GPS端末です。なかでも、音声や文字による相互コミュニケーションが可能な「BoTトーク」は非常に便利。ゲームなどの余計な機能がなく、価格も手ごろなうえ、一度の充電で2〜3週間バッテリーが持続するのは、防災ツールとしても大きな強みです。

また、防災は「構える」よりも「日常に取り入れる」ことが大切です。その点でも、BoTトークは登下校時の見守りとして日常的に使えるため、普段の延長線上で“いざというとき”の連絡手段にもなるのが心強いところです。

「わが家の防災の日」をつくろう

年に数回、「わが家の防災の日」を設けて、家族で避難場所や避難所までの到達時間を測ってみるのもおすすめです。その後、非常食を試食したり、「停電・断水・ガスが止まったら、家でどう暮らす?」を一晩かけてシミュレーションしてみるのも良いでしょう。

キャンプで「もしも」を体験してみる

「不便な生活」を体験する手段として、キャンプなどのアウトドア活動も効果的です。電源のないキャンプサイトでどう過ごすかを体験することは、実際の避難生活にも直結します。

また、キャンプ中のアクティビティとして、防災訓練を組み込むのもおすすめです。たとえば、「さあ、訓練通りに行くよ!ヘルメットをかぶって、避難袋を背負って、靴を履いて、避難場所へGO!」といったマニュアルや標語を家族で決めておくと、非常時にも自然と身体が動くようになります。

“もしも”をいまから始めよう!防災を楽しく学ぶ工夫を

 防災というと、つい身構えてしまうかもしれません。でも、本当に大切なのは、日常の中で少しずつ備えを習慣にしていくことです。たとえば、定期的にハザードマップを確認したり、外出時には家族の写真を持ち歩いて、いざというときに安否確認がしやすくなるようにするなど――そんな小さな工夫が、いざというとき大きな力になります。

そして最後にお伝えしたいのは、大人の不安は、子どもに必ず伝わるということ。だからこそ、できるだけ冷静に、そして可能であれば笑顔で、安全確保のための行動をとるように備えましょう!

プロフィール

和田隆昌さん

災害危機管理アドバイザー。感染症で生死をさまよった経験から「防災士」資格を取り、自治体や企業の災害対策コンテンツを作成。専門誌編集長を歴任。アウトドア、サバイバル術も得意。著書に2023年8月23日発売『今日から始める生活防災』(ワニブックス)他多数、講演会、各種セミナーTVなどマスコミ出演多数。All About 防災 ガイド。

※1 株式会社クロス・マーケティング調べ。2025年7月18日〜22日、20代〜50代小学生の子どもがいる保護者男女1200人にインターネット調査を実施。「子どもの防災対策に関する意識調査」の詳細はこちらから。