2026-03-28
お金の大切さを子どもにどう教える?キャッシュレス時代の学び方【前編】
電車のタッチ決済やICカード利用、コンビニエンスストアでの電子決済など、日常のさまざまな場面でキャッシュレス化が進むいま、子どもたちの「お金との出会い方」も変わりつつあります。
お金を目に見える形で手に取る機会が減ってきたからこそ、家庭の中であらためて「お金との向き合い方」を考えたいもの。そこで今回は、キャッシュレス時代ならではのお金の学び方について、専門家である東洋大学の川野祐司先生にお話をうかがいました。
プロフィール川野祐司氏
東洋大学経済学部 教授。日本証券アナリスト協会認定アナリスト。英国宝石学協会特別会員(FGA)。主な著書に『いちばんやさしいキャッシュレス決済の教本』(2019年、インプレス)、『ヨーロッパ経済の基礎知識 2022』(2021年、文眞堂)、『これさえ読めばすべてわかるアセットマネジメントの教科書』(2025年、文眞堂)など。
動きが「見える」キャッシュレス

画像:東洋大学公式HPから引用
私は長くキャッシュレスについて研究していますが、現在は電子マネーやモバイルペイメント、仮想通貨など、「キャッシュレス」と一口に言っても、さまざまな支払い方法が広がっています。現金を取り出すことなく、スムーズに買い物や支払いを済ませられるようになり、私たちの生活はますます便利になりました。その一方で、「お金を使っている感覚がつかみにくい」と感じる方も多いことと思います。
こうした変化の中で、子どもにどのようにお金のことを伝えていくかは、家庭ごとに改めて考える必要があります。私は、子どもにお金のことを教える前に、まずは親自身が、お金やデジタルとの向き合い方を整理しておくことが大切だと考えています。
キャッシュレスの大きなメリットのひとつは、お金の動きが「見える」ことです。いつ、何に、いくら使ったのかが履歴として残るため、あとから振り返ることができます。もし使いすぎてしまった場合や、子ども同士のお金のやりとりで気になることが起きた場合でも、誰から誰へ、どのようにお金が動いたのかを確認できる。これは、現金ではなかなか難しい点です。
また、落としたり盗まれたりするリスクが比較的低いことも、キャッシュレスの安心できるポイント。北欧では、子どもが使った金額や内容が、親のスマートフォンに通知される仕組みも取り入れられています。
キャッシュレスを味方に、考えて使う力を育てる
一方で、キャッシュレスを使う上で意識したいのは、「お金の実感を持ちにくい」という点です。親がスマホやカードで支払う姿を日常的に目にすると、なかには「お金はスマホから出てくるもの」と誤解する子どもも出てくるでしょう。
特に小学生前後の子どもにとって、画面上のお金はただの数字に見えがちです。価値や重みを実感しにくいため、ついゲーム感覚で使ってしまうこともあります。

Bsizeの調査(*1)によると、キャッシュレス時代の金融教育に不安を感じる親は65%以上。なかでも小1の親は71.0%と、全学年で最も高かった。
そのため私は、おこづかいを渡し始めて最初の1〜2年ほどは現金を基本とし、その後、少しずつキャッシュレスへ移行していく方法をおすすめしています。段階を踏むことで、お金の重みとキャッシュレスの便利さの両方を、無理なく学べるはずです。
メリットを活かすことができれば、キャッシュレスは子どもにとって、「お金の流れ」や「使い方」を理解するための心強い学びの道具になりえる。親が見守りながら関わることで、便利さを上手に活かしながら、自分で考えてお金を使う力を少しずつ身につけることができるでしょう。
成長に合わせて、お金とのつき合い方を変える
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画像:東洋大学公式HPから引用
子どもは、成長や発達の段階によって、できることや理解できることが徐々に変わっていきます。お金とのつき合い方も同じ。年齢や経験に合わせて、距離や使い方を少しずつ変えていくことが大切です。
小学校入学前から低学年のうちは、お金に関して、まずは「体験」と「計算」を大切にしましょう。おもちゃのお金を使った「お店やさんごっこ」などを通して、足し算や引き算を身につけます。お釣りの計算ができるようになると、「お金は勝手に増えたり減ったりしない」という感覚が、自然と身につくはずです。
そして、おこづかいを渡し始めたら、「計画」と「我慢」をテーマにしてみましょう。1か月分のおこづかいをどう使うかを考え、できれば月末に少しでも残す経験をしてほしいですね。値段の高いアイテムが欲しい時には、「これを買うには何か月分のおこづかいが必要かな?」と、一緒に計算してみましょう。欲しいものを手に入れるまで待つ時間そのものが、大切な学びとなります。
「おこづかいを増やしてほしい」と言われた時も、すぐに白黒をつける必要はありません。なぜそう思ったのか、本当にお金が必要なのか、ほかに解決できる方法はないのか。そうした会話を重ねること自体が、子どもにとっては何よりの金融教育になります。
キャッシュレスの時代だからこそ、支払いの方法だけに目を向けるのではなく、家庭の中で一度立ち止まり、「お金とどう付き合っていくか」を親子で考える時間を大切にしてほしい。日常におけるお金に関する小さな体験や対話の積み重ねこそが、子どもがお金についてよく理解し、自分で考えて使っていく力を養っていきます。
後編では、キャッシュレスでお金のやりとりを始める際に親子で意識しておきたいポイントやルールについて、専門家に話を伺います。
*1 2026年に全国の小学生(1〜6年生)とその保護者、祖父母世代を対象に実施した、昭和と令和で変わった「子どもを取り巻く環境と意識に関する調査」
