SEARCHキーワードで検索する

【東京都立川市】登下校に「見える」安心を。子ども見守りGPSの助成制度ができるまで

【東京都立川市】登下校に「見える」安心を。子ども見守りGPSの助成制度ができるまで

都心から電車で約30分。東京都多摩地域の中核市・立川市は、国営昭和記念公園などの豊かな自然に囲まれたエリアで、JR線や多摩モノレールなど交通アクセスの良さにも恵まれています。こうした環境に加え、近年は子育て支援施策の拡充や住宅整備が進んでいることから、子育て世代から高い関心を集めています。

そんな立川市が2024年度に新たに開始したのが、小学1〜3年生の児童を対象とした「子ども見守りGPS端末」の購入費助成制度です。市民からは「子どもの見守りにGPSは有効」「安心につながっている」といった前向きな声が多く寄せられていると言います。

本記事では、子ども見守りGPS端末の購入助成制度導入の背景や市民の反応について、立川市学務課の澤田克巳氏と新美翔大氏に話を伺いました。

変わりゆく社会環境において、見守りの形も進化が必要に

全国的に少子高齢化が叫ばれて久しい中、立川市も長年にわたり同様の課題を抱えてきました。2021年度の合計特殊出生率は1.14と、過去30年間で最も低い水準に。また、25~39歳の若年・子育て世代の転出超過も続いています。

安心して子育てができる環境を重点的に整備することで、若年層や子育て世代の転出を抑制し、彼らから「選ばれるまち」を目指す。そうした考え方は、立川市が2024年に公表した50の施策にも表れており、「親や子の希望や安心を支える」施策が14項目、「防災・安全の質と量を高める」施策が5項目と、子育てや安全対策に関する内容が多くを占めています。

この方針のもと、市は地域と連携した子どもの安全・防犯対策の推進に力を入れてきました。澤田氏は、これまでの取り組みについて語ります。

「新一年生には防犯ブザーを配布し、市内通学路の98箇所に防犯カメラを設置するなど、子どもの通学路の安全確保に力を入れてきました。また、3年間で市内19のすべての小学校の通学路を学校・保護者・警察・関係機関との合同で安全点検する仕組みも整えています。さらに、学校などから寄せられる危ない場所の情報などを反映した『安全安心マップ』を紙で作成し、各校に配布してきました」

一方で、紙のマップには情報更新や利便性に課題が。そこで2025年度からは、Web上で閲覧できるデジタルマップを新たに整備。このプロジェクトを担当した新美氏は、その背景を説明します。

「近年は立川市でも共働き世帯が増加し、これまで立川市シルバー人材センターの会員である高齢者や保護者が担ってきた見守り活動にも限界があるという声が寄せられていたため、ITツールの活用について検討を重ねていました。また、紙のマップを実際に印刷して持ち歩いていただくよりは、Web上で閲覧できる方が実用性が高いと判断し、危険箇所などを集約したデジタルマップを制作・公開しました」

立川市が導入した子ども用GPS端末購入助成制度

立川市では子どもの登下校時の安全施策をさらに拡充するため、子ども用見守りGPS端末の購入助成事業を2024年度から開始しました。

これは、小学1年生〜3年生の低学年児童の見守りGPSの端末本体の購入にかかった費用を1万円まで助成する制度で、本体購入費のほか、初期手数料や送料も補助の対象となります。澤田氏は本助成制度の導入に至った背景を説明します。

「この制度は、2023年に現立川市長が掲げた公約の一つでもありました。市長ご自身も小学生のお子さんを育てており、報道で子どもが行方不明になる事件を目にするたびに、親として心を痛めていたそうです。そこで、地域の見守りサポートに加えて、子どもの行動や居場所を把握できるGPS端末の重要性を強調しました」

GPS端末の購入助成金制度に関しては、2024年4月、公約の発表から約半年というスピードで実現。日々忙しい保護者でも申請しやすいよう、手続きはすべてオンラインで完結できる仕組みを構築し、スマートフォンからも簡単に申請できるよう整えました。また、一部の子ども見守りGPS端末については、記入項目を簡略化した専用フォームを用意することで、申請にかかる手間の大幅な削減につながっています。

 

 

「2024年度の申請件数は全444件でした。うち、半数以上が1年生に対する申請であり、子どもが入学する時期の保護者のニーズが一番高いといえます。そのため、今後は新一年生の保護者に対する事業の周知に力を入れていきたいと考えています」

子どもの安心に自治体としてどう向き合うか

2024年度にGPS端末の購入助成制度を導入して1年が経過したことをうけ、立川市は制度を利用した家庭を対象にアンケートを実施。「GPSの導入が安心につながった」「見守り手段として有効だった」といった肯定的な回答が多く寄せられました。

「 登下校の安全については保護者の関心が高まっているところであり、こうした状況を踏まえると、子ども見守りGPSの存在が保護者にとって大きな安心材料となっているのではないかと考えています」

今後は制度のさらなる周知に加え、長期的な効果検証にも取り組む方針だと澤田氏は最後に意気込みを語ります。

「まずは制度の開始から3年ほど様子をみて、利用状況や効果を丁寧に追いながら、より実効性の高い安全対策へとつなげていきたいと考えています。また、地域の方々が主体的に行っている見守り活動とITの力をうまく組み合わせることで、より一層子どもの登下校の安心安全を確保できればと考えています」

編集後記

共働き世帯の増加や地域の見守り体制の変化にともない、登下校時の子どもの安全をどう支えるかは、全国の自治体に共通する課題となっています。そうした中、立川市では、地域の見守りに加え、GPS等のITの力を活用し、家庭・地域・行政が連携した新たな見守りの形を築きつつあります。

2024年度の端末助成金制度を利用された方々の内訳によると、助成対象となった端末の中で過半数を占めたのがBoTトークとのことで、多くの保護者様のご指示いただいていることを、大変嬉しく感じております。

また、Bsize株式会社が実施した調査(*1)によると、保護者が自治体や学校に求める安心対策として「見守りGPSの無償配布」が最も多く、続いて防犯カメラの設置、登下校見守りシステムの導入など、ITツール導入への期待が高まっていることが判明しています。

立川市の取り組みは、そうした社会の変化に応える一例であり、テクノロジーの力を地域の安心へとつなげる実践モデルとして、他の自治体にとっても大きなヒントとなるように感じました。

*1:Bsize株式会社が2025年3月に実施した調査。14都府県の国立・私立小学校に通う2025年度入学予定の保護者807人を対象にアンケートを実施し、203件の有効回答を得た(調査期間:2025年3月1日〜4月30日)。

RELATED