2025-09-23
子どもの「考える力」をどう育む?お茶の水女子大学附属小学校から学ぶ3つのポイント
子どもが口にする「なんで?」「どうして?」という素朴な疑問。忙しい日々のなかでは、ついつい「あとでね」と受け流してしまうこともありますが、こうした疑問を抱くことこそ、子どもたちが自分自身で考える大切なスタートラインです。
今回家族新聞では、初等教育の先進校として注目を集めるお茶の水女子大学附属小学校に、同校が大切にする「子どもの問い」に向き合う姿勢から、子どもの考える力を育てるためのポイントをお伺いしました。
答えよりも、考える過程を大切にする
東京都文京区にあるお茶の水女子大学附属小学校は、幼稚園・中学校・高校・大学が同じ敷地内に位置する国立の小学校です。大学に在籍する留学生との交流会が小学校で定期的に開催されるなど、各校が連携することで実現できる多様なプログラムが日常的に行われています。

取材日はあいにくの雨模様でしたが、編集部が小学校の校舎にお邪魔すると、子どもたちの元気な声が響いてきました。
それぞれの教室には明確な壁がなく、3年生まではオープンスペースでの学びが基本。子どもたちはグループ活動や発表、少人数での対話など、多様なスタイルで学びを重ねています。

そんなお茶の水女子大学附属小学校にて、副校長の片山守道先生と、教諭の岩坂尚史先生のお二人から、同校の特徴的な授業である「てつがく」についてお話を伺いました。
「てつがく」とは、子どもが自らの疑問を出発点に探究を深めていく学びの時間です。子ども自身が問いを立て、情報を集め、他者と意見を交わしながら考えを深めていくことを大切にしています。
片山先生:「てつがく」では、子どもたちが日常で抱いた違和感や疑問を出発点に、自分で考え、友だちと対話を重ねていく時間を作っています。何かしらの結論に至ることや、きれいな言葉でまとめようとすること、そして正しい答えを導き出すことを目的にはしていません。“わからないことがある”と気づくこと自体が、子どもにとっては大きな学びだと考えています。
身近な疑問が”深い問い”へとつながっていく
実際、授業が終わったあとも、休み時間に議論を続ける子どもたちの姿を見かけることもあるようです。

岩坂先生:これまで子どもたちからは、「友達と親友の違いって?」「ついていい嘘とわるい嘘がある?」といった問いが出てきました。こうした身近な疑問に向き合う中で、相手の気持ちや立場を想像し、自分の価値観と向き合う機会が生まれます。そうした経験を積み重ねることで、やがて「優しさとは?」「平等とは?」といった、より抽象的で本質的なテーマにも自然と関心が広がっていくのです。
ここでいう「問い」とは、テストのように答えが一つに決まっているものではありません。明確な正解がないからこそ、子どもたちは自分の中にある経験や感性を頼りに、じっくり考えを深めていく必要があります。そしてその過程で、他者の意見に触れ、自分とは異なる視点を受け入れる力も育まれる。問いに向き合うということは、知識を得る以上に、自分自身を知り、他者とつながることでもあるのかもしれません。
親子で考える力を育む3つのポイント
とはいえ、正解のない問いに向き合うのは、子どもにとっても大人にとっても簡単なことではありません。「子どもとどう話せばいいのかわからない」「考えが堂々巡りになってしまう」と悩む場面もあるでしょう。そんな時に大人はどのような関わり方ができるのでしょうか。
疑問をお二人にぶつけたところ、先生方が子どもと向き合う上で大切にしていることのなかから、3つのポイントが見えてきました。

①一緒に考える:大人は”教える人”ではなく”学び合う存在”
大人は決して「すべての答えを知っている人」ではありません。分からないことを、時に迷いながらも一緒に考えることで、子どもも安心して自分の考えを相手に伝えていくことができます。
教育現場ではこれまで長い間、大人が何かを教えなくてはいけない、導かなくてはいけないという暗黙のルールがあったように思います。ですが子どもというのは、私たち大人がはっとするような発言をすることもありますし、しっかりとした意見も持っている。私は、対等に学び合う関係性であることを前提に、子どもたちと向き合いたいなと考えています(片山先生)。
たとえば子どもに質問されたとき、「うーん、ママもわからないなあ。一緒に考えてみよう」と率直に返してみると、子どもは知らないことを探る“ワクワク感”に気づくかもしれません。
②失敗を見守る:目はかけても、手はかけない
子どもが考え込んでいる様子を見ると、つい口を出したり手を差し伸べたくなるもの。ですがすぐに答えを与えず、そっと見守ることが大切だと強調します。
これまでたくさんのご家庭と接するなかで、子どもに失敗をさせないよう、無意識に大人が先回りしてしまう事例を多く見かけました。ですが本当に必要なのは、子どもたちが自分で考え、時に失敗し、そこから学ぶ経験をさせること。自ら経験して学んだことは、その後も記憶に残りやすくなります。もちろん、誰かを傷つけるような発言や行動が出てきた時は大人が介入する必要があります。ですが、社会の変化が激しい昨今、自分で考えて動ける子になってほしいのなら、その“動ける場”を整えることこそが、私たち大人の役割。そういう意味で、目をかけるけれど、手はかけすぎないことが重要だと思います(片山先生)。
例えば家庭内では、子どもが料理や工作に挑戦して失敗してしまったとき、「だから言ったでしょ」と正すのではなく、「どうすればうまくいくかな?」と声をかけて、次の挑戦を応援してあげると、失敗を学びに変える力が育まれていきそうです。
③思考を見守る:意見に耳を傾け、対話を重ねる
子どもが自分の言葉で考え、自分の視点を持てるようになるためには、じっくりと“考えを育てる時間”が必要です。
そのとき大人にできるのは、まずは「耳を傾ける」こと。まだまとまりきらない思いや考えを否定せずに受け止める。そんな”思考の見守り”のあり方について、岩坂先生はこう語ってくれました。
「親」という字は、木のそばに立って見ると書きますよね。少し距離をとりつつ、子どもが考えることや行動することを見守る。親の役割として一つの大切な考え方だと思います。(岩坂先生)。
たとえば子どもが「○○ってちょっと変だなと思った」と話したとき、「そう思ったんだね」とまず受け止めた上で、「ちなみになんでそう思ったの?」と少しずつ対話を重ねていく。そうして子どもは自分の気持ちを整理しながら、相手に伝えるための言葉を見つけていけるのかもしれません。

こうして多くのヒントを教えてくれた片山先生と岩坂先生も、「子どもと向き合う日々の中で、もちろん僕たちもいつも悩み、試行錯誤しています」と笑います。子どもとの関わり方に迷った時には、学校の先生や他の保護者に相談するなど、さまざまな視点に触れることも大切だと語ってくれました。
子どもの問いや疑問に対して、急がず、決めつけず、大人もともに考える姿勢を持ち続けること――。その積み重ねが、子どもにとっての「考える力」を育む土壌になるのかもしれません。
編集後記
お話を伺う中で印象的だったのは、お茶の水女子大学附属小学校の先生方が、「子どもを信じて見守る」ことを一貫して大切にされていたことでした。子どもが自分の力で考え、ゆっくりと育っていくその時間を尊重する。そばに立ち、急がず、見守る。そんな教育のあり方に、深く共感しました。
私たちBsizeが提供する子ども見守りGPS「BoTトーク」も、まさにそうした“見守り”のスタンスを大切にしています。安心安全の観点から、いつでも子どもの様子を把握できるGPS機能に加え、必要なときは「声」でつながることができる。そんな適度な距離感が、子どもにとっても大人にとっても心地よい関係を築くと信じています。

実際に、お茶の水女子大学附属小学校のお子さまの中にも、BoTトークをご利用いただいている方がいらっしゃるということで、私たちの考える“見守り”が、こうした教育の現場やご家庭の中で自然に広がっていることを、とても嬉しく感じました。
これからも、子どもが自分の力で世界を広げていけるように。BoTトークは、そばにいながら、信じて見守る存在でありたいと願っています。